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旧有限会社は株式会社に移行すべきか、そのまま特例有限会社で存続すべきか

【アドバイザー】
日本事業支援コンサルタント協会
理事長 生田目 洋文

経営者・創業者のための相談・セミナー開催等を行うとともに、資格者の先生方への「新業務」・「会社法」等のセミナーを行っております。また、実務経験からのノウハウをCDーROM化した製品、「創業するぞ」・「会社法対応ガイド」を現在発売しており、この9月からは「経営するぞ」の発売を予定しております。
今後、皆様のお役に立つテーマを掲げ、多方面の情報をまとめて体系的に解説してまいります。

この5月1日より会社法が施行されましたが、979条からなるボリュームのある、この法律をすべて頭に入れることは至難の業です。そこで、実務上よくかかわる箇所をピックアップし、関連法も含めて総合的に考えることで実務に役立てようという、よくばり版です。 今回は、「旧有限会社は株式会社に移行すべきか、そのまま特例有限会社で存続すべきか」をテーマに、まとめてみました。

■有限会社の選択

 「会社法」の施行と同時に「有限会社法」は廃止され、5月1日からは有限会社設立できなくなり、法律上有限会社はなくなりました。会社法では「特例有限会社」という株式会社として適用されます。
しかし、現存の有限会社は、株式会社に一本化されるのだからと、株式会社に移行することを会社法は強制していません。「このまま存続する」か「株式会社に移行して運営する」かは、会社自身の選択に委ねています。
そのまま存続するためには、会社法の適用を受けるために登記事項の変更が必要ですが、この登記は登記官が職権で手続しますので、会社自身からの何の手続も必要でありませんし、登録免許税もかかりません。
今までどおり何もしなくても、有限会社として経営は続けていけます。

■有限会社継続のメリット

それでは、何もせずにそのまま継続していると、どのようなメリットがあるのでしょう。有限会社を継続することのメリットは、会社法と旧有限会社法の両方からあります。

<会社法の新たなメリット>
項目
内容
社員数の制限がなくなる 社員(出資者)50名の上限がなくなる
社員持株会を組織・資金が集めやすくなる
種類株式の発行が可能 事業承継をスムーズにするために「拒否権付株式」「議決権制限株式」が活用できる
社債の発行が可能 株式会社として扱われるので社債の発行ができる「少人数私募債」の発行が可能になる

総会の書面が不要

株主総会参考書類・議決権行使の書面の交付が不要


<整備法による旧有限会社法のメリット>
項目
内容
役員の任期が無期限 特例有限会社は無期限となる
計算書類の公告不要 特例有限会社は不要
会計監査人が不要 大会社であっても特例有限会社は不要
みなし解散がない 特例有限会社は、みなし解散制度の適用がない

有限の名前に価値観

会社法施行後は、有限会社の設立はできなくなるので、「有限」に希少価値があるのか?

■有限会社継続のデメリット

つづいて、そのまま継続することのデメリットです。

項目
内容
事業拡張には向かない 特例有限会社は積極的な事業の拡張や株式の公開を目標とする会社には向かない
譲渡自由株式発行なし 特例有限会社の定款には、譲渡制限以外の株式の発行ができない
会計参与等の設置なし 他との差別化を図るために、計算書類の適正な作成とその開示を行う手法が利用できない

対外的信用がなくなる

会計参与などの設置ができず会社の信用度を高める手法を採用しにくい

■商号変更による株式会社への移行の手続

特例有限会社から株式会社への移行をするためには、商号の変更を行いますので、定款を変更する必要があります。株主総会を開催し、特別決議の承認により定款の定めの変更ができます。また、移行後の株式会社が会社法の有利な制度を受けられるようにするためには、定款にその定めを設けなければなのません。

 定款変更の流れ
   ↓
 株主総会招集を決定
   ↓
 株主総会で定款変更決議 (株主総会の特別決議での承認)
   ↓
 定款作成

特例有限会社から株式会社への移行は、定款変更の決議による記載の変更だけでは完了しません。株主総会決議の日から、本店所在地においては2週間以内に、登記申請を行わなければなりません。

■登記の申請

 以下の2つの登記申請を同時に行わなければなりません。

◇「特例有限会社の商号変更による株式会社設立登記」
項目
内容
登録免許税 資本金の額の1000分の1.5。この金額が3万円に満たないときは3万円
添付書類等 株式会社設立登記申請書  
登録免許税納付用台紙(必要金額の収入印紙を貼る)
株主総会議事録(商号の変更を始めとする定款変更を決議したもの)
定 款   
別紙
印鑑届
印鑑証明書(代表者個人)

◇「商号変更による通常の株式会社への移行による有限会社解散登記」
項目
内容
登録免許税 1件につき3万円
添付書類等 有限会社解散登記申請書
登録免許税納付用台紙
別紙

 上記の登記申請に必要な書類を順番に綴り、管轄法務局の申請受付窓口に提出します。これで、特例有限会社は株式会社となります。

■商号と印鑑

 特例有限会社が、通常の株式会社に移行したい場合は、定款を変更し、その商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をすることになります。
この商号の変更にあたっては「有限会社〇〇〇〇」を「株式会社〇〇〇〇」
に変更するだけでなく「〇〇〇〇株式会社」や「株式会社△△△△」に変更することも許されます。

このように、特例有限会社から通常の株式会社に移行する場合、旧有限会社については解散の登記をし、新たに株式会社を設立する登記をするため、株式会社の設立の登記をするにあたり、改めて代表者の印鑑届をする必要があるのです。印鑑カードについても、特例有限会社のときに使用していたものは引き継ぐことはできず、改めて印鑑カードの交付を申請する必要があります。

なお、株式会社の代表印として、特例有限会社のときに使用していた印鑑を届出ることもできますが、取引先等に特例有限会社のまま存続しているかの  ような誤解を与えることのないよう別の印鑑を届出るほうが良いでしょう。

■既存役員の取り扱い

 特例有限会社から通常の株式会社に移行しても、原則として役員を選任しなおす必要はありませんが、有限会社の役員に選任された時期によっては、新たに従前の役員を選任しなおす必要があります。通常の株式会社へ移行することで、整備法により特例有限会社では無期限であった取締役の任期は、会社法の適用により原則として2年、監査役の任期は、原則として4年となります。

したがって、特例有限会社から通常の株式会社へ移行する際に、従来の有限会社の役員選任時から起算して会社法の任期を経過している役員は、通常の株式会社へ移行すると同時に任期が満了します。そこで、この場合には、通常の株式会社へ移行する際、新たに従前の役員を選任する必要があります。非公開会社(発行する株式の全部を譲渡制限とする旨を定款で定めている会社)は、定款に定めることにより、役員の任期は10年まで延ばすことができます。

■期中に株式会社へ移行した場合の決算

 期中に特例有限会社から株式会社へ移行した場合、特例有限会社を解散し、新たに株式会社を設立したものとして登記することとされていますが、会計上は、この事業年度は継続されたものとして取り扱われます。したがって、移行日の前後で決算を分ける必要はなく、今までの決算期に株式会社として通常どおり決算をすればよいのです。

 また、税務上も、同様に、従来の有限会社の事業年度が継続しているものとして取り扱われます。法人税法上は、組織変更により他の種類の法人となった場合、組織変更前の法人の解散登記、組織変更後の法人の設立登記にかかわらず、その解散又は設立はなかったものとして取り扱うこととしています。 したがって、法人の事業年度は、組織変更に区分されず継続することとされているのです。

 なお、組織変更により、商号の変更等をした場合には、税務署、都道府県税事務所及び市町村役場に「異動届出書」を提出する必要があります。

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